しもべの余生(本物)

最近、挫折を味わいました。

ちょっと世界線が違うので(人気アーティスト編)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プレゼン資料

 

 

 

「……どう?」

「どうって言われても、ねぇ。なめてるとしか思えないかな」

「なめてなんかないよ!結構頑張って作ったのに、そんなこと言わないでよ!」

「いや、正直な感想を教えてって言ったのはそっちじゃん」

 

友人のはそういってあからさまに眉を吊り上げる。確かに正直に言ってと言ったのは私の方だった。もちろん友達の意見も受け入れなくてはいけないと分かっているが、昨晩徹夜で作ったものをいとも簡単に悪く言われると堪えるものがある。

 

私がキンググヌーを知ってのは少し前の事だ。ある日何気なく見ていた音楽番組での彼らの容貌、さらには二つとない音楽センス。魅了されるのは当然だったのかもしれない。ただその時はそれまでだった。(この後、修学旅行で行ったグアムの道端で白目をう歌いながら闊歩するほどハマることになる。あの時が人生で一番楽しかった)

 

ではなぜ、私はこんなプレゼン資料を作っているのだろうか。これには深く深く深~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~いところとは全く縁もゆかりもないほど浅い理由がある。単純に友人と「最近自分がハマっているものプレゼン大会」をやろうという話になったからだ。よく皆さんのTLにも流れてくるでしょ?そのジャンル界隈では人気の高い絵師(字書き・コスプレイヤーでも可)がかなりクオリティの高い「推しキャラプレゼン大会」を行い、ジャンルの垣根を超えたところでバズっているのを。そのツイートを見ては嫉妬し、見ては嫉妬し、ついに私たちもやろうではないかとなった。

少しでもクオリティの高いプレゼンが出来たらツイッターにあげよう、そしてバズろうと誓いを立てた2日と24時間後、私は友人から「なめてる」とお言葉を頂いた。(私のプレゼンはキャンディ―ではない)

 

 

「まずさ、いろいろ言いたいことはあるけどキンググヌーっていうのがなめてるよね。まだ新規とはいえ、さすがにグループ名は正しく書こうよ、キンググヌーってかたかなじゃないじゃん」

「そうなんだけどさ、なんかカタカナの方がかわいいじゃん……」

「え、そういう問題じゃなくない?なんか子供向け雑誌に登場するときみたいになっちゃうじゃん」

「(ちょっとよくわかんない)」

 

友人のよく分からない例えになめているのはどちらか分からなくなる。

 

「もう、やめにしよう。こんな会話はやめにしよう。慣れないことして、私たちが仲悪くする必要なくない?ツイッターでバズるなんて無理だよ」

「無理かどうかは分かんないじゃん!……でもそうだね、あんたの言うとおりだよ。今回はやめにしよっか。てかまず三日って短すぎるんだよ、もっと時間があればうちらだって界隈の有名人だよ」

「期限は一年です。っていわれても?」

「嘘。前言を取っ払わせてもろて」

 

本当に適当なことばっかり言ってるんだから。

 

「とにかく!キンググヌーのこと好きになったんでしょ!確かに向井のことはよく見かけるね。人気の曲くらいしかしらないけど、向井のことはなんとなく耳に入ってくるんだよね」

 

さすがツイ廃と言うべき友人、キンググヌーにの基礎知識はある程度もっているみたいだ。私なんて初めのころは同時期に出てきた髭男爵?みたいなグループとよく間違えたものだ。別に私だけじゃない。この二組の違いが分からんと言ったツイートがバズっていてそれにいいねをしたのは記憶に新しい。やっと見分けがつくようになってきたのは完全なる私の努力だ。まあ、まだたまにまちがえてしまうのだけど。ご愛嬌だろう。

 

「向井みたいな人間になれたら人生楽しいだろうな。私が向井になれたら周りの人間を踏み潰すもん」

「発想がどうしたなんだよ、ジェルライナーの上から濃いシャドウを重ねる時の某アイドルかよ」

「あの子かわいいよね~」

「「そうじゃない」っていうとおもったー-!」

「あははははははは!!」

 

先ほどまでの険悪な雰囲気は何だったのか。やっぱりこうやってすぐに冗談で笑いあえる私たちはどんなバズよりも素晴らしいものだろう。改めて自分たちの仲を確認しあった私たちは帰路へと着いた。

 

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「待って!!!!あの人向井さんじゃない?!」

「いや、そんな向井がこんな道端をあるくわけ……えっ??!!めっちゃ似てる!!!ちょっと覗いてきなよ?!」

 

そういって肘で背中を押される。普段なら絶対に遠慮してしまうが、なぜ友人といる時の女子というのはこんなにも横柄なんだろうか。私はズカズカ(ズカズカ宝塚)とその人物のそばまで行き顔を覗く。初めて見るアーティスト中ではない向井さん、いったいその素顔はどんなものなのか期待が胸を膨らませる。

 

「……」

「……」

「……」

 

「ぜっんぜん違うじゃん!!!!」

「は~~~~~~~~~~~~!違うんかい!!早く戻っておいで!!!!」

 

向井さんぽい人には申し訳ないが、まったくの期待外れに胸も萎んでしわしわになってしまった。もともとないのにこれじゃあ困る。まあ、こんな田舎で人気アーティストが歩いているわけないのだ。まだ少し残るドキドキとじわじわ押し寄せる悲しみが、私ってもう向井さん、いやキンググヌーの虜なんだと気づかせる。今はまだどんなに足掻いても新規だけど、一年二年と経てば誰でも新規は卒業できる。もっと深く知れる。これからのキンググヌーの活躍はまだ誰も知らないのだから。感動の瞬間を古参・新規関係なくリアルタイムで目の当たりにして共有できるのだ。こんなにワクワクしたのはいつぶりだろう。萎んだ胸は先ほどまでなかった熱量を伴ってじわじわと膨らんでいく。

 

「なんか楽しそうだね」

「うん!なんかキンググヌーのことを知ることが出来て本当によかったなって思う!」

「ならよかった!それはそうと私のプレゼンも聞いてくれない?私も結構頑張って作ったんだよー!」

「聞く聞く!!何をテーマにしたの~?」

「えっとね、俳優の井口サトル!」